12月10日〜18日まで、カンボジアへ水谷と竹下は出張してまいりました。松永篤憲さんと鎌田朱美さんが同行して下さいました。
今回の目的は、7月に依頼してあった反物を受け取り、チェックと指導すること、3月までの新たな依頼をすること、機織りの環境や家族の意識の調査、
一つ目の反物については、以前藍染をした糸を撚ったものと、シングルの二通りで織ってもらったものがどのような仕上がりになるかが課題でした。
結果は、やはりフライングシャトルを使っていること、縦糸を強く張りすぎている事が原因で生地が横に張ってしまう表情は、変わっていませんでした。
藍染も、色がさめてしまったのか、あまり色が出ていませんでした。
機織り環境では、以前作った貯水槽に水が入っていませんでした。
事情を聞くと、猫が喧嘩して中に落ちてしまったので、水を抜いたとのことでした。この話が本当かどうか、定かではありません。
以前は、ポンプで水を汲み上げる必要はないとの事でしたが、結局、人にお金を払って水を汲んできてもらっているのが、現状でした。
男性陣に聞くと、やはりポンプで河の水を組み上げてほしいということでした。
その為には、発電機も必要になり、雨に濡れないように管理する必要があるのですが、松永さんが両隣の家がポンプを使っている事を調査して下さって、使い方は皆知っている様なので、ポンプを設置することになりました。
これで、さらに効率の良い環境に近づいてきました。
(IKTTのポンプと貯水槽)
(IKTTの貯水槽には二つの蛇口がついています)
私達は、新しい織り手について調査インタビューをしました。
隣の家族は「コン・モン一家の様に勉強しながら仕事をしていく事を考えた事は、ない」という答えでした。
しかし、ひとりの女性は、勉強しながら仕事を一緒にしたいと申し出てくれました。
時間がなくて、詳しいインタビューをできなかったので、まだ彼女に依頼できるかは、決めることができませんでした。
そして、シェムリアップのIKTT(クメール伝統織物研究所)へ向かいました。
彼らは真剣に複雑な模様が織られている伝統のシルクを初めて目にして、圧倒されていました。
今までは、納期に合わせて納品する為に、早く織る事を中心にやってきた彼らにとって、ここの技術は別格。
どうして、布が柔らかく織れるのか、実際の様子を見てもらいました。
現在の布の縮縦率は10 %もありますが、IKTTの布は5%。
原因は縦糸の張り方と、横糸をフライングシャトルで織っていること、糸の精錬のやり方の違いにあることです。
今回は、IKTTの「伝統の森」で2泊3日で糸の精錬を研修。
ここは、カンボジア伝統の染織方法を行っている村で、私達のプロジェクトを村人総出で手伝って頂いています。
今回も、そのお礼に村の子供60名と家族に、お菓子や食品の差し入れをさせて頂きました。
村の人達とも顔合わせして、早速精錬の方法を教わりました。
カンボジア伝統の精錬はバナナの茎を灰にして、灰汁を作ります。
その灰汁で糸を煮て精錬するのです。
その仕上がりは、とても柔らかなものでした。
さらに、このやり方で精錬すると、色落ちしない草木染ができるそうです。
現在、森本先生の取り組まれている「無印良品」の草木染のタオルは、堅牢度は基準に達して色落ちのしない草木染の技術によって、大量生産がなされています。
初めて、プルックルンテ村の人に、この方法を伝えた時に、彼らは全く信じてくれませんでした。
しかし、実際体験してみて、この方法を理解してくれました。
今までは、日本式のマルセイユ石鹸と重曹で煮込むやり方をやっていました。マルセイユ石鹸は、高価なので、これからこのバナナの茎でできれば、材料費も掛かりません。
その後、、彼らが織っている生地についてIKTTの森本先生やスタッフの方からアドバイスを頂きました。
今回の研修で学んだバナナの茎を灰にした灰汁を使った精錬の方法で糸を柔らかくする事と、縦糸の張り方を気をつけることを注意して織る事を次の課題としました。
そして、今回の研修では良い風合いを作る技術に徐々に挑戦して行こうという意思も持っていけたようです。7月にはコンさんが2週間の研修をすることになりました。
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